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プロジェクトのご案内 

ごあいさつ

神経疾患ブレインバンクのホームページをご覧いただきありがとうございます。

神経疾患の診断方法は、医学の進歩により大きく進歩しました。しかし、現在でも多くの場合は病理解剖を行わなければ最終診断をすることができません。さらに治療方法については、多くの疾患ではまだはじまったばかりという状態です。

さて、神経難病などでは脳はどのような変化を起こしているのでしょうか?これらは、病気で亡くなられた患者さんの脳を直接調べることにより解明されてきました。患者さんの死後に、ご遺族から同意を得て病理解剖を行い、ホルマリン固定標本や凍結検体を保存して医学教育や研究者に提供する活動をブレインバンクと呼びます。このブレインバンクは1980年代後半から欧米では多く設立されましたが、日本で2000年頃からその重要性が認知されはじめ、公の研究費提供を受けられるようになりました。このため、日本の医学研究者は患者さんの死後脳を使った研究がまだ十分できない状態が続いています。

私たちが患者さんを診療していますと、患者さん(あるいはご家族)から、自分(あるいはご家族)の死後に脳を研究に使って欲しい旨お話しいただくことがあります。また、医学の進歩に貢献したいと思っても、どこにどのようにご自分の意志を伝えたらよいか分からず悩んでいる方々に少なからずお会い致します。

そこで、神経難病の中で患者数が多いパーキンソン病を対象に、患者さんの生前からの意思に基づく「献脳生前同意登録制ブレインバンク」(以下、ブレインバンク)を2006年4月に設立しました(創設時の主任研究者は久野貞子 国立精神・神経センター病院副院長)。このブレインバンクでは、患者さんご自身に十分に考慮して頂いたうえで、ご自分の意思で“自分の死後に脳を解剖しブレインバンクに寄託する”ご意志を登録して頂いています。 その後、2012年(研究代表者:元国立精神・神経医療研究センター病院副院長 有馬邦正)には対象疾患を、パーキンソン病から神経疾患全般に広げ、“神経疾患ブレインバンク”と名称を変更し活動を続けています。登録者数は160人を超え、2014年7月現在16名の病理解剖が行われました。

登録された方々には、まだまだブレインバンクの活動の認知度が低いことを御指摘頂き、もっとこの活動を広く知ってもらえるようにとアドバイスを頂いております。HPや市民公開講座等で少しずつ活動して参る所存です。

また、この活動を行って行く中で、登録者が亡くなられた後に、ご家族が登録カードに気がつかれて、ブレインバンク事務局に電話して下さり病理解剖が行われた例があります。そして、ほとんどの方々は、療養型病院、施設、御自宅で亡くなられた後、病理解剖ができる病院にご遺体を搬送して頂き、病理解剖を行うことが出来ており、篤志を生かす道筋がつけられたと感じております。後日、ご遺族に病理解剖の結果をお伝えした時、「医療に貢献できて本人も喜んでいると思います」とご遺族からお言葉を頂くことが少なからずあります。これらのお言葉は私たちにとって大変大きな励みであり、感謝しております。

更に、ご家族が神経難病のために苦しんだ経験をお持ちの健康な方も登録して下さっています。医学研究を行うには神経疾患ではない方の脳が必要ですので、健康な方の登録は大変ありがたいことです。

死後脳が医学研究に役立つだけでなく、画像診断をはじめとする検査所見、神経所見と病理所見の対応などが明らかになることで、同じく神経難病に罹っている方々の臨床に直接役立てる事が出来ます。

登録者の皆様のご支援をいただき、神経疾患ブレインバンクは病理解剖を行える拠点を、東京地区から、新潟市周辺、名古屋市周辺、大阪市周辺のほか、全国13施設に拡大することができました。まだ未整備な地区もございますが、なんとか皆様の篤志を生かすことができるよう、今後とも活動して参りたいと思います。

皆様のご理解とご協力を切にお願い申し上げます。

2014年7月7日

神経疾患ブレインバンク 主任研究者 齊藤祐子
(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 臨床検査部臨床検査科医長)